不機嫌顔をした船頭は港にたたずみ、雲の流れや風で揺れる樹木の様子から沖の模様をきづかう。四、五人ではあるが乗組員を集めて手際よく、船を出す時を判断しなくてはならないからだ。毎年のことながら、今年も解禁日前後の海の模様がなんとも気掛かりで、海の神に祈るしかない。ズワイガニ漁解禁のころ、丹後の沖の表面水温は真夏の摂氏二八、九度から二十度以下に下がり、ズワイガニのいる水深二百数十から三百メートルでは一上一度、日本海の表面から底まですっかり冷え込む。それでも、暖海性の魚たちは、日に日に下かっていく水温に追われるようにして、越冬場所へと急ぐ。