【鮒寿司】の材料にニゴロブナがなぜいちばん良いのか

2011-01-20

滋賀県の名産品「鮒寿司」は、現在の寿司の原型であり、もともとは「馴れずし」の一種だったといわれている。馴れずしの歴史は古く、穀物の発酵を利用した保存食で、東南アジアの山岳地帯が発祥とされる。貴重なタンパク源である川魚の保存方法として生み出され、それが稲作とともに海を越えて日本に伝えられたと考えられている。明確な伝来時期は不明だが、平安時代に編纂された『延喜式』のなかに名前が記されているのが、記録として残っている最古のものとされている。江戸時代には将軍御用達の品にもなり、贈答品として珍重されてきた。現在ではその製法をはじめとする情報が、滋賀県の無形民俗文化財となっている。琵琶湖を持つ滋賀県は、昔からフナの産地として知られていた。また、滋賀県は品質の良い近江米の産地である。さらに降水量も多く、発酵菌の活動には欠かすことのできない湿気も多い。そのほかきれいな伏流水も豊富だ。ということも考えれば、手間ひまをかけて、じっくりと作り上げていく鮒寿司には適した環境だといえる。鮒寿司を作る喜多品老舗によれば、鮒寿司に使われているのはおもに琵琶湖特産のニゴロブナで、そのほかにゲンゴロウブナとギンブナを使うところもあるという。その中でも、王道中の王道がニゴロブナであり、喜多品老舗では、とくに三月から五月頃に獲れる、肉厚で身がしまり、卵を持った雌だけを使っている。では、なぜニゴロブナが使われているのだろうか。その理由としては、発酵させると骨まで柔らかくなって、頭から尾までまるまる食べられるからだとされている。また、鮒寿司を作るときには、エラぶたの内側からまな箸という専用の道具で内臓を取り除く作業を最初に行なう。その際、ニゴロブナは体高が低くて、体幅が厚い筒型の体形をしているため、体帽が薄いほかのフナよりも作業が比較的やりやすいという。このこともニゴロブナを使う大きな理由となっているようだ。ただし、近年は琵琶湖の生態系が変化し、温暖化の影響で肝心のニゴロブナが減少し続けている。ニゴロブナは産卵場所の減少や、外来魚のブラックバスやブルーギルの繁殖などによって、ピーク時の一九六〇年代に推計五〇〇トンたった漁獲量が九〇年代に低迷し、九七年には一八トンにまで減少した。環境省も絶滅危惧種に指定するなどニゴロブナにとって危険な状態になってしまった。そこで、滋賀県は地元漁業団などと協力してニゴロブナの保護に努め、稚魚の放流とともに一定の大きさまで成長していないものの漁獲禁止や禁漁期間の設定、外来魚の駆除などを実施した。その結果、大幅に生息数が増加し、二〇〇六年には、対策に乗り出した九四年度以降で最多の生息数に回復している。こうしてフナが順調に増えれば、鮒寿司はますます広がることだろう。

(参考)
喜ばれる快気祝いの見つけ方


快気祝いの作法


快気祝いを知らない人のために