【ほうとう】が名物になったこの地域ならではの事情とは

2011-01-26

「ほうとう」は小麦粉を主原料として季節の野菜や肉などを加えた一種の煮込みうどんであり、山梨県を代表する郷土料理として知られている。「ほうとう」という名前の意味は明らかではないが、中国の唐・宋時代の不托または不餅が、千余年前に日本に入ってきたものだという。その後、平安時代末期に現れたうどんに追われて山間地に残り、現在にいたったといわれる。では、ほうとうはなぜ山梨で名物になったのだろうか。山梨で最初にほうとうの販売を始めた内田製麺によれば、それはこの地方が米のあまり多くとれない地域だったからだという。山梨は昔から地形的に山間地や沼地が多く、平らな土地が少ないため米がとれにくかった。その代わりに、古くから米に次ぐ主食とされる小麦の栽培が盛んだった。こうしたことから、小麦を使ったほうとうが広まったと見られる。そのため山梨ではほうとうのような粉食が好まれている。うどんが盛んな地域も同様に、基本的にあまり米がとれない地域が多いという。また山梨の地域性は、ほうとうと一緒に煮込む具にもあらわれている。ほうとうといえば古くから具として使われているのがカボチャだ。「うまいもんだよカボチャのほうとう」という言葉でも知られている。そのほか、甲州が生んだ戦国時代の英雄といえば、何といっても武田信玄だが、その信玄はよく戦陣にほうとうを持って行き、家臣に振る舞い、家臣たちの健康維持に気を配り、士気を鼓舞して戦いを勝利に導いたと伝えられる。こうした行動の背景にも、小麦を主食とするこの地方の特色があったと見られる。同時に、「信玄も食べたほうとう」というイメージも、山梨名物に押し上げた要因のひとつだろう。信玄が、戦陣でほうとうを振る舞ったという話を疑問視する向きもあるが、信玄が戦をした現在の新潟県や群馬県でも、ほうとう料理が親しまれていることを考えれば、作り話ともいいきれない。

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