大規模修繕を求める声が高まり、管理組合は大手マンション管理会社で構成される「マンション保全診断センター」に相談を持ち込んだ。診断センターは、屋上防水・外壁塗装・配管修理などの基本工事費用を一戸平均で「二五〇万円」と見積もった。給水棟の新設を含め、共用部分を包括的に修理すると一戸「五〇〇万円」。耐震工事を施し、抜本的に直すには一戸「八〇〇万円」かかると告げられた。本格的な改修に踏み切れば、建て替えは確実に遠ざかってしまう。管理組合は、一戸「八万円」の負担で弱っている外壁に剥落止めのピンを打ち込んだ。重度の水漏れに悩まされる棟では、壁内の配管をつぶし、バイパス状の「露出配管」を屋外に這わせて応急処置を行った。藤和の撤退後、新たに住宅ローンを組める若い世代の住人たちは、建て替えを待たず、新しいマンションに移り始めた。建て替えへのエネルギーが、砂時計の砂が落ちるように目減りしていった。推巡派は。手をこまねいて眺めているわけにはいかなかった。