ベッドの下も引き出しの内もビスケットの缶の底までも全て調べ上げられる。我々のチャンギ号はビルマにとっては近代的すぎたがゆえに、航海器械のあらゆるものに疑いがそそがれた。東京と直接交信ができる無線機やソナーはスパイ活動用の器械と疑われる。このあたりから、我々が漁業調査以外にスパイ活動、特に海底資源探索にも関係があるのではないかという話題がビルマ側におきだ。かつての日本軍がアジアに資源を求めて侵入したあの歴史がビルマ人の頭の中に残っている。しかたあるまい、チャンギ号の活動は全て日本人によって決められ実行されているからである。こんな時、我々は「日本人」かと自分にはられている民族標示ラベルが気にかかる。調査に乗り込んできている高官の一人がチャンギ号の乗組員全員は裁判に附され、船体と漁獲物は没収されると告げて下船する。十六時に全員上陸して陸上施設に収容されると船長が告げた。